Log(きょうごく)

きょうごくのLog

都内在住の大学生の日記です。

そのうち出てくるかな

 ヘアピンを2つ見つけた。無くした部屋の鍵を探していたら、ベッドの下から発見された。

 僕はヘアピンを使わないし、これの持ち主の心当たりは1人しかないのでその彼女が忘れていったものだろうと察しがついた。カノジョでもないしセックスをする仲でもない。

 最後に彼女が来たのはいつだったかなとLINEを見返すと4月の頭のことだった。

 その後も部屋の隅々まで鍵を探したけど、ベッドとベランダとの隙間とか机の下の壁際とかの埃の積もっているのばかりが発見された。蓄積された時間を吸い取るようにコロコロをかけた。結局鍵は見つからなかったけど、出てこいと思っていると出てこなくて、なんでもないときににひょっこり姿を現すだろう。鍵に限らずそういうものだ。

 そういえば彼女は「邪魔だったら捨てといて」って言ってたけど歯ブラシも置いていったのを思い出した。普段使わないコップに立てかけていたので邪魔にならないしなんとなく捨てずにいた。例えば僕の母さんが独り暮らし僕の部屋に突然やってきて、2本の歯ブラシやヘアピンがあるのを見たらうるさいだろうなあとふと思った。今までは気にも留めていなかったのに僕の目線より少し高い位置にある彼女が置いて行った歯ブラシが存在感を誇示するかのようににわかに光を放っているように見えて、まぶしいので足元のごみ箱に捨てた。

 スーパーに行くために外に出た。空気はアスファルトの上に溜まっているみたいでなまぬるく、セミの声はどこか遠くから聞こえる。首にタオルをかけたおじさんが背をまるめてとぼとぼと歩いている。いつのまにか夏だ。気だるい、短すぎる夏だ。今年の夏は部屋のなかにふさぎこもって気だるさと手をつないでいたらもう8月だ。今年の4月から7月は本当にちゃんと過ぎていったのだろうか。神様なるものがいたならばどこかでごまかしてさっさとカレンダーをめくってしまったんじゃないだろうか。

 帰ると、机の上に置いていたヘアピンが目についた。捨てても構わないだろうとも思ったけど、なんとなく将棋の駒を入れている箱に一緒にいれておいた。そういえば前に貸した将棋の本読んだのだろうか。きっと読んでいないし、どうでもいいや。

 この前とどいたはがきに「こんど無断で遊びにいきます」と書いてあって、無断なのはともかく今度っていつなんだとか思っていたけど、気にしないことにした。それより部屋の鍵はどこに隠れてるんだろう。