Log(きょうごく)

きょうごくのLog

都内在住の大学生の日記風ブログです。いや日記です。

文通

 友達から手紙が来た。青い封筒には雑に貼られた3枚の切手、左上から右下に流れた不器用な縦書き。封筒の中には、「ございます」などと不自然に丁寧な言葉で書かれた手紙、実験用のグラフ用紙でこさえたと思われる返信用封筒にピンクや水色の可愛いディズニーの便箋(友達が使ったのはシンプルな白の便箋なのに)、そして初めて見るマジックザギャザリンのカードが2枚。なかなか個性的なおくりもの。

 その友達はこのコロナ禍で暇を弄んで仕方ないらしく、とは言っても最近ぜんそくと診断されたのもあって人一倍他人との接触に慎重なようで、そこでひまつぶしに文通でもしませんかとのことらしい。暇すぎるがあまり、さば缶をあけるまでさばは生きているか分からないという「シュレディンガーの鯖問題」について日夜考察している、と手紙には書いてあった。僕も何か「シュレディンガーの鯖」に対抗しうる思考実験について考察したいけど、そんなニッチなものは僕の頭には浮かびそうにない。

 例えば僕の昨日は、将棋のネット対戦をまるでなめらかな世界で慣性が働いているかのように昼も夜もなく指し続けていたりしていて、本当は課題をしたり教授に言われた論文を読んだりしなきゃいけないし、きちんとスーパーに行って野菜や肉を買ってきて料理をしたいとも最近積読気味な小説を読みたいとも考えていたはずなのに、負けすぎて将棋に疲れると冷凍食品のチャーハンを平らげつつ原作で何度も読んだ灰原哀の初登場スペシャルをYouTubeでボーっと眺めていたりした。高校の頃の国語の先生が、「忙しい時期に恋人を作っている暇などない、というのは大嘘だ。恋人がいるからこそ生活にハリができてどんなに多忙でも頑張れるんだ」と言っていた。その手紙をよこしてくれた友達に恋してるわけではないけれども、独り部屋で鬱々と時間を潰していた僕はその手紙を読んで1人にやにやし、シャワーを浴びて机に向かえたからやっぱりそういうことなのだと思う。

 勉強もほどほどに、本当はあの便箋と封筒を使うのは気が進まないが、せっかくなのでそれを使って返信を書こうとしてみたけれど、思うようにペンが進まなかった。

 こうやってダレトクなブログを気ままに書くことはあれどーもちろんその友達はこのブログのことは露ほども知らないがー高校生の頃付き合っていた子を除けば誰かから手紙を貰ったことも書いたこともない。照れや恥じらいと戦いながら恋人へ書く手紙はそれでそれで難しいと思うけれども、恋人でもない誰かに目的もなく手紙を書くのだってひとしお難しいもので、文の調子だけとってもどう書いていいものか分からない。あの「ございます」の調子も共感できなくもない。

 変わり者の友達は僕以外にも何人かの友達に文通を持ちかけているようだが、僕も含めてそのみながマメに返信するのか疑わしい。2、3回やりとりをして、というのが関の山な気がする。しかしそう思うと寧ろこの文通は意地でも続かせねばと半ば宿命じみた気持ちにすらなって、それにやはり僕が手紙をニヤニヤ読んだときのことを思ったりもする。コンビニでも切手は買えたっけ。