Log(きょうごく)

きょうごくのLog

都内在住の大学生の日記風ブログです。いや日記です。

【日記】独りチャイナタウンにて

 目の前に座っていたおじさんが電車を降りた。空いた席に座って顔を上げると窓に映る自分と目があった。心なしかいつもより僕の顔はナヨナヨしているように見えた。頼りない。800円くらいで買ったパチモンくさいアディダスのキャップを深く被り直す。

 4日間行動を共にした友たちは日本に帰った。1人はやっぱり寂しいし、不安だ。目的地は終点だけど駅に止まるたびに駅名を確認した。

 やってきたのはバンコクのチャイナタウン、フアラムポーン駅だ。道に迷ってしまったので着くのが予定より遅くなってしまった。ぐずぐずしてると日が落ちる。今晩泊まる宿が決まっていないので探さなければならない。しかし、やみくもにホステルを探すのは難しい。カオサン通りというバックパッカーの聖地ならばふらふらっと歩いて適当なところにチェックインできたが、そんな芸当ができるのはあそこだけだ。安いホステルをネットで探すが得策。だが、僕はフリーSIMカードを使ってないしポケットWi-fiも持ってないのでインターネットを使うにはフリーWi-fiを使える店を探す必要がある。結局Wi-fiの使えるカフェを見つけるのに30分近くかかった。こういう時に限って僕の不安をかきてたてるようにマックの1つも姿を現さない。

 アイスコーヒー代と引き換えに手に入れたネットでお手頃価格の駅近くのゲストハウスに目星をつけた。どうやら僕は駅を出てメインストリートから反対方向に進んでいたらしく、来た道を引き返す。あたりはかなり暗くなってきた。一緒に歩いてくれる人はいない。トボトボ歩いていると道がすごく長く感じる。バックパックを背負い直して無理にでも胸を張って歩いた。

 やっと着いたホステルはあまり待遇が良いとは言えなかったが、ここ数日友達と部屋をまるまる1つ借りていたのが心地よすぎたのだ。近くの別の宿と比較する元気も余裕もない。値段は高くないから文句は言わずに泊まるとしよう。でも、カードも使えないのにおつりを出す現金がないなんて言われたのは参ったけど。そんなことあるか。近くのセブンで現金を無理やり作る羽目になった。

  チャイナタウンでぶらぶらして夜ご飯を食べる店を探した。昨日泊まったエロマッサージ屋の並ぶ通りは日本語を頻繁に見かけたけど、ここはチャイナタウンだけあって中国語の看板だらけ。道で交わされてる会話もよく耳にするのは中国語だ。人が一段と多く行き交う場所の、1人でも食べやすそうな屋台で中国風ともタイ風ともつかない麺料理を食べることにした。

 案内されたテーブルは4人掛けだった。テーブルを使わずに乱雑に道沿いに並べられたイスに座って麺を啜っている人もいて、僕もそれで構わないのにと思っていたら相席を頼まれた。頼まれたというか当然のように僕の向かいにお客さんが通された。まあ構わないけど……と心の中で呟きかけたが、その客を見てすぐ心の呟きはウェルカムに変わった。イスに座ったのは欧米系の美人の女性。座りながら会釈をされる。僕も笑顔で応じる。こんなラッキーなことはない。1人旅バンザイ。屋台のおばちゃん気が利くなあ、ありがとう。なんて思ったのはほんの一瞬のことだった。どこぞの小説みたいに出会いは転がってはいない。現実は現実。遅れて美女の隣に座ったのは同じく欧米系の男だった。喉のここまで出かかっていた「Where are you from?」を引っ込めた。そうだよね、こんなところに女性1人じゃ来ないよね。彼らは顔を擦り寄せて1つの料理を仲良くシェアして食べていた。僕は彼らの視界には入っていないだろう。そういうことにしてキャップを深く被った。