Log(きょうごく)

きょうごくのLog

都内在住の大学生の日記です。

【日記】失望のテスト

 朝の空がきれいだ。何もかも許したくなるほど清々しく広い。

 すっかり明るくはなっていたがまだ6時前だというのにランドセルをしょった女の子とその父親と母親だろう,スーツケースを引きずった大人が2人慌てた様子で走っていくのが見える。平日のこんな時間にどういった都合なんだろうと想像を膨らませる僕の心情は彼らとは対照的に余裕のある朝を楽しんでいた。

 僕はその朝を一夜漬けで猛勉強して迎えた。夜は一睡もしなかったが前日の昼にたっぷり睡眠をとっていたおかげか眠気はほとんど感じなかった。いや達成感とそれからくる高揚がそうさせたのかもしれない。自分でも拍手を送りたくなるほど集中した一夜漬けだったのだ。そのときの僕は教科書のテスト範囲の数式を全てそらで導出できた。恐いものなしだった。

 テストは1限でまだ3時間程時間はあった。近くのコンビニに行き珍しく朝食をとった。洗濯をした。部屋の掃除もした。腕立て伏せを何度できるか試してみた。スマホアプリのピアノでスーパーマリオのテーマを奏でられないかチャレンジした。

 それだけのことをする余裕のあるテスト前なんて素晴らしいじゃないか。

 小学生の時は漢字の書き取りを除いてテストは好きだった。いつも100点満点,とはいかなかったがそれ近く取れたんだから嫌いになるわけがない。中学生の時も嫌いじゃなかった。友達にマウンティングしまくっていた。高校生のころには大嫌いだった。もう難しかった。

 久しぶりに小学生や中学生の時の感覚を取り戻していた。かかってこい,返り討ちにしてあげよう。

 午前9時,少し緊張の糸の張った教室が心地良い。おうおう,今頃慌てて教科書を読んでいるようじゃダメだな。昔大嫌いだった高校の教師がそう言っていた。悔しいがその通りだ。せいぜい足掻くが良い,俺は高見の見物といこうか。

 時間だ。解答用紙に続いて問題用紙が前から送られてくる。

「全員もらったねー,......始め!」

 教授がよく通る声で言った。間髪入れずに問題用紙を裏返す。教室中の生徒たちが問題用紙を裏返す音と自分のそれが不釣り合いにも綺麗に重なった。 

 なんだこれは......。これじゃない。コレジャナイ。

 想像していた問題は全く書かれていなかった。テスト範囲を間違えたわけではない。理系ならよく分かるだろうか,僕が一晩かけて対策したのは定量的な式の導出や計算だった。問題用紙にあったのは定性的な記述問題や選択・穴埋め問題ばかりだった。つまり,これじゃない。僕が迎え撃たんとしていたのはこれじゃないんだ。

 手が出なかったわけではない。7割くらいは得点できた手ごたえはあった。でも,失望した。僕が一晩脳のキャパシティをフル活用させたことの内8割は無駄だった。「できたー?俺ヤバイかも」とテストが終わった後に気の抜けてアホな面をした友達に「完璧かな......秀は確実だね」とドヤ顔をしたかった。なぜならいつもは僕がアホな面をしている側の1人だからね。