Log(きょうごく)

きょうごくのLog

都内在住の大学生の日記風ブログです。いや日記です。

成人式のスピーチを知らない間にすることになっていた

 今から二か月は前のことだったと思う。

 中学の同級生から連絡が来た。卒業以来会っていない同級生も多くいるが、彼には何度か他の友達と一緒に会うことはあった。仲が良いと言えるほどではないけど友達ではある、くらいの同級生。

 スマホに表示されたのこんな文言だった。

 ー成人式のスピーチしてくれない?

 そのころはまだ語学留学でオーストラリアにいて、さながら旅行気分だった僕の頭からは日本という名の現実は離れていたころだったが、丁重に断らせて頂く程度には日本から遠く離れた地からでもその面倒くささは汲み取られた。いくら50人程度の中学の同級生しか来ない田舎の成人式でのスピーチとはいえ、愛想よく引き受けるほど自分は人間はできていない、というか大人ではない。成人することは大人になることとは別問題だ。

ーいや、めんどいわ。パスで。

ーりょ

 その時にしたのはこんな簡単なやり取りだけだった。

 

 そして先日のこと。母親から連絡があった。年末はいつ帰省するの? ちゃんと生活できてるの? などといった、どこの母親でもするようなおせっかいな心配症のLINEでも送られてきたのかと思ったが、違った。そして驚いた。

ー成人式で発表することになったらしいね。

 え?? その依頼なら確かに断ったはず…...

 成人式の実行委員をしているあの同級生のトーク履歴を慌てて確認する。確かに断っている。それとも何か不思議な理由でこの「パスで」の意味を彼はポジティブに勘違いしたのか? いや、そんなわけあるまい。困惑しつつそのまま通話のアイコンをプッシュ。

ーもしもし?

ーもしもし、俺が成人式でスピーチすることになってるのってマジ?

ーえ、うん。

ーえ?俺断ったくない?

ーあれ?オッケーしてくれなかったけ?

 …...思い浮かぶ。「どうせあいつならなんだかんだでやってくれるでしょ」とか言いながら俺の名前を勝手に書いて役場に提出した彼の姿が容易に思い浮かぶ。「生徒副会長してたし人前で喋るの慣れてるっしょ」とかもっともらしい理由を言いながらね。ハメられた。ハメられたというか強引に押し付けられた。

 昔から人に強くものが言える性格ではなかった。人が良いなどとたまに言われるが、そんなもの弱さの裏返しだ、と思う。彼も俺が怒り露わに反撃してくるとはまさか思っていないだろう。実際そんなことはしないのだが。

 もちろん俺がスピーチをするのは理不尽極まりないとの反論を電話でしたが、既成事実として俺がすることで決まっているのだ。代わりを探しもしたが、する人が見つからないから彼も勝手に俺の名前を書いたわけであって。喜んで引き受けるという物好きなど見つからず。

 次の日郵便受けを除くと成人式の案内が届いていた。郵便受けを毎日チェックする習慣がないのでいつ届いたか分からないが、それほど前のことではないはずだ。封を開けてみると成人式の案内だけではなく、意見発表についての連絡も入っていた。

 -この度は実行委員会から依頼のありました成人式での意見発表をご快諾いただき、ありがとうございます。

 冒頭を読んで笑ってしまった。ご快諾した覚えがない。

 こうやって貧乏くじを引かされる人生を歩むのかなとふと思った。上司のミスを押し付けられ、なぜか理不尽にも平謝りを余儀なくされ、昇進の目を失って…...そんなストーリーをどこかで読んだことがあるような気がする。もしかしたら自分の未来かもしれない。

 優しくなるのは簡単な気がする。サッカー部だったころ、味方のプレーを責める人がいた。よく言えるなあと思う。飲食店でバイトのミスを説教をしているクレーマーを見たことがある。よく言えるなあと思う。ちょっと笑って「気にするな、頑張ろう」とでも言うほうが簡単だと思うのだ。たとえ、強く説くことが正解だったとしても。

 帰省したら自分にスピーチを押し付けた彼に何と言おうか。もちろん多少怒っているし笑って許せるとは思わないのだが、顔を見るなり怒りを込めて責めることもぶん殴ることもできそうにはない。そういうそれともそうしたほうが得な人生を歩めるのだろうか。