Log(きょうごく)

きょうごくのLog

都内在住の大学生の日記風ブログです。いや日記です。

オーストラリア留学記 #24 シドニーの夜のお店、入る店を間違えた……

 昼間よりも活気を見せているのではないかと思うほど夜中でも騒がしいシドニーの街を歩いていた。少し前で控えめにあたりを見渡しながら歩いている男友達の足取りからは浮かれ気分が感じられる。

「あれとかよさそうじゃないかな?」

 彼が歩調を緩めながら道路の反対側を指した。

「それっぽいけど……よく分かんないな」

 彼が指した店の前では、黒服のガタイの良い男が店に入る客の身分証を確認しているようだった。よく見ると店の壁にはR-18の文字。看板には黒に赤字の英語が書いてあるが意味は分からない。このときは深く看板など見もしなかった。

「でもセキュリティはしっかりしてるみたいだし、シックな感じでいいじゃん。ちゃんとしたところだろ」

 その店を選んだ理由なんて彼のその言葉だけ、そんなものだった。「クラブに行ってみたい!」というノリだけで夜の街をぶらぶらしてふらっと入ってみました、という具合だ。実は日本でもクラブなど行ったことはなかったが、どうも海外にいると気が大きくなってしまう。

 道路を渡り店の前でガタイの良い男にパスポートをチェックされる。さらにカメラで顔までチェックされる。未だ何の店か分かっていなかったが、セキュリティはしっかりしているようなので少し安心はした。

 受け付けまで案内され入場料$20を支払った。相場など知りようもないが未知の世界への切符代としては高くは感じない。腕に押された入場許可の証のスタンプは大人として認められた証のようで嬉しく感じた。それともスタンプを押されて喜んでいる姿は子供らしいだろうか。

 重々しい扉を両開きにゆっくりと開く。いざ未知なる世界へーー目に飛び込んできたのは裸同然でポールにしがみついて踊っている女性の姿だった。思わず友達と顔を見合わせる。彼の顔には驚きの色がありありと浮かんでいた。本来は陽気に飲んで女の子とダンスをしてお近づきになれる場所に行きたかったのだが。日本語が理解されるはずもないが大音響の中でささやくように言う。

「どうする?出るか?」

「入場料支払ったばっかじゃん。それにこれはこれでアリだろ」

 友の言葉に頼もしさと男を感じた。そわそわしながらもカウンターをスルーして奥の空いているソファに座る。ステージでは、下着姿と言うのが正解か分からないが、上と下を隠していたり上は隠していなかったりする数人の女性がポールを使って刺激的なポーズをとっていた。ステージのすぐ前のソファにはチップを出す気前の良さと変態性欲を持つ客が座っているようだった。チップを胸やお尻と下着との間に挟まれた女性たちは上の下着をとり、そのお客さんと絡む。絡むといっても物理的にしっかり接触するわけではなく、はたまた刺激的な格好で至近距離までせまる。後から知ったが、こういうのをストリップというらしい。

 それに対して他の客はそれぞれにお酒や談笑を楽しんでいるようで不思議な空間だなと思った。あまり興奮を感じなかったのも不思議だ。友とこの不思議な空間についての感想を語り合いつつ、自分たちも何か飲むことにした。カウンターに向かい適当にビールを注文する。やけに値段が高いと感じたがビールの銘柄のせいではないだろう。だがそういうものなんだろうと割り切る。

「ハーイ、お兄さんたち」

 ビールを注文すると店のお姉さんが気さくに話しかけてきた。ちなみにステージ以外の人はバニーガールのような恰好をしていた。もちろん英語で話しかけられたのでよく理解できなかったが、「何分で何円だよー♪」みたいなことを話されているらしいことは分かった。他の客の様子を見る限りでは女の子と親しく喋れるオプションを勧められているのだろうと予想をつける。とんでもない、普通に飲んでも湯水のように金を使いかねないのに余計にジャバジャバさせるわけにはいかない。それに二十歳の日本人男子の目からすればお姉さんたちいい歳してるように見えて仕方がない。しかし、構わずお姉さんは親しげに自分の背中を触りながら話しかけてくる。背中の触り方にゾクッとしたが、これが大人かなんて思った。

 お姉さんの迷惑な誘惑をどうにか断り、ビールをちびちび飲んで目に焼き付けておくようにゆっくり時間を過ごした後店を出た。「変な店に入っちゃったもんだな」と口角の上がった顔で言いながら外に出る。振り返って看板を見上げてみるとやはり赤い文字の意味は分からなかったがその横に書いてある絵が何かは分かった。なんで入るときに分からなかったのだろう。その絵がポールと女性のシルエットなのに気づいたとき、今度は声に出して笑っていた。