Log(きょうごく)

きょうごくのLog

都内在住の大学生の日記風ブログです。いや日記です。

オーストラリア留学記 #22 切ない二十歳の誕生日

「明日の夜は外で食べるからね!」

 夜ご飯を家で食べることがますます少なくなってきて申し訳なさを多少感じながら帰ってきたときのこと、ホストマザーのエリザ(仮名)に言われた。

 ああ、そういえば一週間ぐらい前にもそんなことを言っていた気がする。
 二十歳の誕生日は外でお祝いしよう、と。

 ある種束縛から解放されるのは嬉しいがティーンという響きを失ってしまうのは寂しい。いつしか年が少し離れた姉が「いつから誕生日を迎えることに素直に喜べなくなったけ」と言っていたが、おそらく二十歳の誕生日が人が素直に喜べる最後の誕生日だと思う。

 次の日、いつもより少し早めに帰宅した。本当は誕生日は翌日だけれども、明日以降は家にいない予定だったので少しフライングの誕生日祝いだ。既にエリザと自分と同じくホームステイの日本人、太郎(仮名)は自分の帰りを待っていたようだった。

「準備できてる?行こう!」

 今ちょうど返ってきたところだが準備することなどなにもない。無論、財布もいらないだろう。一応持っていくけど。

 エリザの運転でレストランに向かう。そう離れた場所にあるレストランではないらしい。いったいどんなところに連れていってもらえるのかと思いながらー彼も同じくエリザの家でホームステイをしているのだがーブラジル人のシーラン(仮名)に夜ご飯に連れて行ってもらった時のことを思い出した。

 大きなモニターで競馬観戦ができる場所やカジノエリアもある、ホテルのような建物内にあるレストラン。ご馳走してもらったのは決して安くはないステーキ。つたない英語しか喋られない二十歳そこそこの日本人が一人で入るには似つかわしくないであろうレストランだった。さすが三十にもなる英語ペラペラのブラジルの男は違うなあと感心したものだ。

 エリザについては普段の生活はいたって庶民的だが、仮にも同時にホームステイを三人受け入れることのできる経済力と大きな家がある。祝い事となれば恐縮ものの高級な料理を食べさせてもらえるのだろうか。

 そんな期待を軽く抱きつつ着いたのはストリート沿いのレストラン街のような場所だった。堅苦しい雰囲気はなくおしゃれ感があるけどカジュアルな感じ。まあ、あまりにも畏まったレストランでナイフとフォークの使い方に始まり色々な作法を気にして食べるよりは全然良いかもしれない。高級料理が食べられなくても、ちょっと特別おいしいものや普段気軽にはチャレンジできないものが食べられれば嬉しいもんだ。車を降りて数あるバーやレストランの中の一つの店のテラス席に座る。

 エリザが立ち上がって言った。

「注文してくるからまっててね。ここのフィッシュ&チップスはおいしいのよ。」

 ……ふぃっしゅあんどちっぷす?

 

 こんなジョークを知っているだろうか。

 世界で一番幸せな男とは、アメリカの家に住み、日本人を妻にし、イギリスで給料をもらい、中国人のシェフを雇う男のことだ。

 逆に世界で一番不幸な男とは、日本の家に住み、アメリカ人を妻にし、中国で給料をもらい、イギリスの料理を食べる男のことだ。

 このジョークそのものはさておき、そう言われるほどにイギリス料理がまずいのは有名だ。そしてオーストラリアもイギリスの植民地だっただけあって食事はイギリス式。確かに家庭料理はチン中心、どこに行ってもハンバーガーとケバブとフィッシュ&チップスばかり売っていて、フードコートにあるほかの店は世界各国の民族料理。食文化に乏しい印象だった。

 

 しかし、まさか誕生日のご馳走がフィッシュ&チップスだとは想像もしなかった。正直に言わせてもらうとしょぼい。個人的にはファストフードだ。メニュー表を見ていないので金額は分からないが、出てきたのはいたって普通のフィッシュ&チップス。なんでこれが誕生日祝いなんだ……?もちろん祝ってもらっているのに料理がしょぼいとケチをつけることなどしないが心の中ではクエスチョンマークがいくつも浮かんでいた。

 まあ、これも文化の違いだろう。オーストラリアで二十歳の誕生日を迎えた、その事実だけでもかっこいい気がするもんだ。