Log(きょうごく)

きょうごくのLog

都内在住の大学生の日記です。

田舎と都会

 8月中旬としては比較的涼しめだからだろうか、少し時期としては早めに思えるツクツクボウシの鳴き声が少し遠くの笑い声に混ざって聞こえてくる。痛む尻に流れる川の水が冷たかったがすぐに起き上がる気は不思議と起きなかった。なんて言い方をするとまるでこの状況がむしろ心地よいみたいだがそうではない。そのままぼんやりと上を見上げると木々の隙間から青空がのぞかせているが、田舎の自然あふれる景色に赴きを感じるどころか同じ空でつながった都会の喧騒を想ったのだった。

 

 お盆を少し過ぎたころ実家に帰った。東京からほぼ半日かけての帰省だ。以前にも述べたことがあるが、地元は東京の喧騒などとは遥か無縁で、東京の文明の豊かさに慣れた身としては不便に感じる自然豊かな田舎だ。母の久しぶりの手料理を食べ、遅くなった墓参りをし、親戚一同でバーベキューを楽しみ、ペットの犬をかわいがったりなどと過ごした後の帰省3日目のこの日、俺は川にいた。川と言っても東京に流れる隅田川多摩川を想像してもらっては困る。山の中を流れる渓流だ。俺は渓流釣りをしに来ていた。いや、正確には釣りに来させられていた。

 今も地元に残っている小学生からの友達たちと会うのが帰省したときの楽しみの一つだ。しかし、ご飯を食べてバカ騒ぎするのはいいが、加えて会うたびに釣りに出かけるはめになる。不思議なことに地元の友達の休日の趣味はパチンコ・釣りと相場が決まっている(多少偏見含む)。もちろんレジャー施設がほとんどないので不思議ではないと言えばそうかもしれないが。

 去年は海釣りに連れて行ってもらったが今回は川釣りに連れてきてもらった。比較して思うが、海釣りのほうが好きだ。もちろんスタイルによるのだろうが、前回と今回と釣りを今まで2度しか経験したことのない人間の感想としては前回のほうがよかっただけだ。海にむかって竿を振ってのんびり釣っているのがよかった。今回は魚のいそうなポイントを探して川をうろうろするはめになった。クロックスを履いていれば心強かったのだがビーチサンダルでは岩石だらけの渓流は頼りない。

「こっち来いよー!こっち釣れそうだぞー」

 友達がかなり上流のほうで呼んでいる。この装備ではうろうろするのはおっくうだが確かにこの場所は釣れる気配がさっきから全くしない。置いて行かれるのも嫌なので仕方なく上流を目指す。にしてもあいつら進むの速いな。

「オッケー、ちょっと待ってー」

 そう言って苔の生えた岩を避けながら水の流れに逆らって歩き出そうとしたときだった。

「あっ」

 ビーチサンダルが脱げかけ右足が流れにすくわれた。とっさに竿を安全圏の茂みの中に投げるともいえない程度に突っ込む。そのまま尻から水にダイブ。こけた場所に大きな岩はなかったようだが尻にそれなりのダメージ。服もしっかりと水につかってしまった。精神的にもかなりのダメージ。

 自然と大きなため息が出た…。

 

 どうやらビーチさんサンダルの鼻緒が切れてしまったみたいだ。上流のほうで 大丈夫かー?w とかいいながら友達が笑っている。ようやく文字通り重い腰を上げて竿を手にとった。ゆっくりと時間をかけ友達に追いつく。それからは動き回る気が起きず同じ場所でずっと釣り糸を垂らしていた。そして最後まで結局一匹も釣れなかった。まあ友達もハエが1匹釣れただけらしいが。

「釣れないしこけるしもう最悪だわー。」

 そう言いながらさっさと家に帰って風呂入りたい、んで特に予定もないけど東京に戻りたいなんて考えながら川を下っていた。

 気づくといつの間にかまた友達とわずかに距離ができていた。なんであいつらあんなに歩くの速いだなんて思ったが裸足だからか当然かと思い直した。少し急ごうと岩から岩へ歩き渡ろうとすると岩の上に黒いなにかを見つけた。

 クワガタだった。久々に見たミヤマクワガタに子供のように興奮して捕まえた。手にクワガタを持ったまま超スピードで友達に追いつく。さっきまでの憂鬱な気分はどこかにいっていた。

「見てみて!クワガタ見つけた!」

 東京じゃクワガタを見つけて童心を思い出すことなんてできないかもしれない。